三朝四朝又朝朝

思ったことなどを徒然に・・・・・・
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「JIN -仁- 完結編」・・・ある時間管理人の告白その4
はじめに

「ある時間管理人の告白その3」の続きです。

「JIN -仁- 完結編」についての、ちょっとしたお遊びということで・・・。
したがって、「JIN -仁- 完結編」を見たことのない方には、全く意味不明だと思います。

時間管理人と名乗る不思議な老人と出会った私。平成22年の10円玉やホスミシンの薬瓶の話、龍馬や東修介のことに続いて、橘咲について聞いてみることに・・・。


橘咲

「仁が江戸から東京へ戻った後、咲は仁の記憶を無くした感じなんですけど、本当のところはどうなんですか?」
私は最も気になっていたことを聞いた。
「あの後は、おいらも大忙しさ。咲、恭太郎をはじめとして、仁友堂の連中、松本や多紀など奥医師たち、新門の親分や喜市など、南方先生に関わった連中の記憶を消しに回ってたからね」
「ああっ、それは大変だ。でも、仁の記憶を消さなきゃいけなかったんですかね?」
「そりゃそうよ。南方先生が江戸から消えた以上は、最初からいなかったことにしないといけねぇだろうよ」
「はあ・・・」
「でもよ、さっきの10円玉の話だけどよ、ほら、象山先生が南方先生に渡したやつさ。おいらが見逃したやつ」
「ああっ、はいはい、ありましたね」
「あれを橘んとこのお嬢様が見つけちまいやがってよ。それで、記憶を取り戻しちまいやがってさ」
「そうですね。あれがきっかけで咲は薄っすらと仁のことを思い出したんですよね」
「薄っすらとじゃねーさ。全部戻っちまったのさ」
「えっ、全部!?」
「ああっ全部な・・・。よほど南方先生のことを慕ってたんだろう・・・」
「それはそうでしょうが、しかし、あの手紙には、全部思い出したって感じではなかったような・・・」
「ああっ、あれかい、あの手紙はおいらとの約束の結果さ」
「約束?」
「ああっ、あのお嬢様は、ああいう性格だろ。記憶が戻った後、あれこれ調べまわってたのさ。で、仕舞いには、おいらんところへ押しかけてきちまいやがってよ」
「へえ、御隠居の存在を探り当てたんですか?」
「そうよ、まいったね。愛の力っていうやつの為せる技なのかね。おいらも最初は惚けた振りをしてたんだがよ。例の10円玉を突き付けられた時は、さすがに参っちまったよ」
「なるほど、それは言い逃れできませんね」
「まったくだ。で、おいらも腹を括ってよ。こう言ってやったのさ。『お嬢様よ、それ以上騒ぎ立てすると、おいらは、あんたをも修正しないといけねーのよ』ってね」
「ほほう、それで咲はどうと?」
「いや、あのお嬢様、お前さんと違って、感が鋭いっていうか、まぁ賢いお人でよ。その一言で全部を察しやがったよ」

お前さんと違って・・・それは余計な一言だと思ったが、私は敢えて突っ込まなかった。

「全部とは?」
「『あんたをも』ってところに引っかかったんだろうよ。つまり、他に修正すべきものがあって、その上で自分もって解釈したようだ。まったく、感が鋭いったらありゃしねーよ」
「『他に修正すべきもの』って何だったのですか?」

大切なもの

「そりゃ、仁友堂と恭太郎のことさ」
「あっ!そっか・・・」

私は呟いた。
仁友堂は、そもそも仁が始めたものである。そこへ咲が手伝い、佐分利や福田や山田などが参加したのだ。その仁が消えた以上は仁友堂の存在もいつかは消してしまわねばならないことになる。
恭太郎は言うまでもない。致命的な傷を負い、仁の手術で助けられたのだ。歴史の修正力によって修正されなければならない人物のはず・・・。
私の独り言に老人は頷いた。

「そういうことよ。仁友堂は、まぁ、頃合を見て、解散って形で消滅させるつもりだったしな。恭太郎も機会を見て消えてもらう手筈を整えてたところさ。そいつを咲は見抜いちまいやがってよ、おいらのあの一言で・・・」

そうだったのか・・・。仁友堂も恭太郎も消える運命にあったのだ。でも、ドラマでは写真も残っていたよな。何があったのだろう・・・。

「で、御隠居の意図を見抜いた咲はどうしたんですか?」
「咲は思いつめた目をして、おいらにこう言ったのさ。『南方先生のことは私の胸に仕舞っておきます。これ以上は騒ぎ立ていたしません。その代わり、兄上と仁友堂をお助け下さい』とね」
「へえー」
「まぁ、おいらとしちゃぁ、どうでもいい事だったけどよ。咲が騒ごうがどうしようが、仁友堂と恭太郎を消して、咲の記憶ももう一度消せば済む話だしよ」
「確かに・・・御隠居さんからすれば、交渉の余地なし、ですね」
「そうよ、しかし、あのお嬢さんは、短刀を抜いて自分の首筋に当てて『もし私の願いが受け入れられないということなら、私はここで死にます』とまで言ったのさ。さすがのおいらもその心情にほだされてよ。で、約束させることにしたのさ」
「どんな約束ですか?」
「まず、南方先生の事は絶対に他人には言ってはいけない、その存在を匂わせる言動をしてはならないってことさ。で、お嬢さんは仁友堂から身を引くこと。そして、仁友堂は今後の医学の主流にはしねぇこと。これでいいなら、おいらは何も手を出さねーよって言ってやったのさ」
「あの・・・恭太郎さんは?」
「あははっ、忘れてた。あいつは龍馬や東たちとは違って、空気みたいな奴だからよ。まぁ生かしておいても邪魔になるよーな奴じゃねぇしな。恭太郎も記憶を消すだけで手出しはしねーよって約束したのさ。しかし、あん時の咲の勢いは凄かったぜ。南方先生への思い、兄の恭太郎への思い、仁友堂への思い、そういうのが一緒になって燃え上がって、それがおいらに向かって吹き付けてくるって感じでよ。その思いの強さにおいらは負けたってわけさ・・・」

そうだったのか・・・。咲はすべて思い出していたのだ。そして、仁友堂を守るため、恭太郎を守るため、仁への想いを封印せざるを得なかったのだ・・・。

「時間管理人も情にほだされることがあるんですね」
「まあな・・・あまり誉められたもんでもないさ。それだけ咲の想いが強かったってことだろーよ。その代わりと言うか、後でエゲレスの管理人からクレームがきちゃってよ」
「イギリスから?」
「そうよ。仁友堂は消すつもりだったけど、咲との約束で残すことになったろう。で、エゲレス担当の奴が『ペニシリンはどうしてくれるんだ!』って捻じ込まれたわけさ」

あっ、なるほど・・・。ペニシリンはイギリスのアレクサンダー・フレミングが発見することになっている。この事実は変えられないわけだ。

「で、どうされたんですか?」
「そりゃぁ、あちらさんの言い分はもっともなことだからね。『そちらは予定通り進めて下さい』って言うしかねーじゃねーか。で、おいらは仁友堂の連中があれ以上のもんを作らないように、監視して実験やら何やら全部失敗させたわけさ。結果的に日本のペニシリンは『土着的に作られた』って感じにしたのさ。ちょいと苦しかったけどな」
「なんとか辻褄を合わせたって感じですね」
「そうよ、まぁ情に流されたおいらが悪いんだけどよ。元はといえば、象山先生が10円玉を江戸へ持ち込んだことが原因なんだが、象山先生もおいらも、まさかこういうことになるとは思ってもなかったよ」
「不思議なもんですね・・・。しかし、御隠居さん、咲のあの手紙は大丈夫だったんですか?御隠居との約束に反するわけじゃなかったんですかね?」
「あの手紙か・・・。おいらも後でこっそり読ましてもらったがよ、ありゃぁーおいらとしても文句のつけようがないさ。おいらの約束と南方先生への想いと、ホントにギリギリの線をついてきたってところだな。てーした娘だぜ、咲はよ・・・」
「そういう内容だったんですかね?」
「そうよ、南方先生があれを読めば全て分かったはずだ。"歴史の修正力"から逃れるために、こう書いたってことをよ。他のやつらが読めば、そこまでは分からんさ・・・。考えても見ろよ、あの10円玉はよ、誰がどう見ても日本国の平成っていう時代の硬貨だってことは分かるだろ。江戸にも小銭はあったわけだしよ。しかし、それを敢えて咲は『奇妙な銅の丸い板』なんて妙な表現をしてんだぜ。普通なら『平成という聞き覚えの無い時代の銅の小銭らしきもの』とかさ、そんな感じで書くだろうよ」

佐久間象山が平成22年から江戸へ持ち帰った10円玉・・・。
それが、最後の最後で、こういう意味を持っていたとは・・・。
思い返せば、象山は仁にこう言っていた。「お前のやったことが意に沿わぬことであったなら、神は容赦なくお前のやったことを取り消す!神はそれほど甘くはない!」と。咲の強い想いが、神、すわなち、時間管理人の情に訴えかけ、その意向を変えさせた・・・。

咲はそこまで考えて書いたんだ、あの手紙を・・・。
この老人との約束を守り、仁友堂や恭太郎を救い、その中で自分の想いを仁に伝えたい・・・大切なものを守りたい・・・そういう全ての想いが詰まった精一杯の手紙だったのだ・・・。

「おいら、最後にあのお嬢さんに聞いてみたのさ。『何なら南方先生の記憶を消してやってもいいんだぜ。もう二度と会えねーのに、覚えてるのはつらいだろ』とね」
「で、咲は?」
「『今のままで十分にござりまする』だとさ・・・」

私は咲のことを想い、溢れてくる涙を抑えることができなかった・・・。

つづく
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