三朝四朝又朝朝

思ったことなどを徒然に・・・・・・
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「JIN -仁- 完結編」 私的最終回その2
JUGEMテーマ:JIN -仁-
 
続きです。

注意事項は「その1」と同じです。
 
「困るんだよな、早々に歩き回られるとね、南方」
杉田がカルテを覗きながら俺に言った。
「・・・ちょっと外の空気が吸いたくなったから」
「まあ、いくら簡単な手術とは言え、一応脳をいじってるからね。分かってるだろう、専門のお前なら」
「簡単な手術・・・?」
「おいおい、大丈夫か。お前が開発した手術方法だよ。従来よりも安全で簡単にアプローチできるようになったじゃないか」
「ああ・・・そうだった」
「まぁ、馬車馬のように働いてたからな。しばらくはゆっくりするといいと院長も言ってたぞ」
「そうさせてもらうよ・・・」

現代に取り残された俺は事情がぼんやりとだが飲み込めてきた。
周りのスタッフたちは同僚の杉田や研修医の野口をはじめ知っている人ばかりだ。
人間関係は変わってはいない。
でも、俺が江戸時代へ行く前の"現代"よりも今の"現代"の方が微妙だけれども進んだ時代のようだった。
そもそも、俺は、怪我をして病院に運ばれたわけではなく、勤務中に倒れ緊急オペを受けたことになっていた。
その勤務している病院も東都大学附属病院に勤めていたはずだが、仁友堂大学附属病院となっていて・・・。
これは、すべて俺が江戸でやってきたことの影響なのだろう。
最初は違和感を覚えた新しい知識や周囲の環境もいつの間にか自然と受け入れてしまったいた。
"歴史の修正力"というものが俺の記憶をも、少しずつだけれども、修正し、上書きして、現代の"俺"にしていっている感じだった。

友永未来という人物は病院の職員名簿にもなく、入院履歴もない。
外出を許された俺は、ミキが住んでいたマンションへ行ってみたが、そこは、見ず知らずの人が住んでいた。
江戸の面影を探して街を歩いているとき、見覚えのある後ろ姿を追いかけたが、振り返った女性は、当たり前だが、ミキではなかった。
覚悟していたことだったけど、独りだけ取り残された感覚が常に俺につきまとう・・・。


今や自分の母校となった仁友堂大学の図書館へ行ってみた。
大学の創立者は橘仁一郎・・・。

「橘・・・仁・・・」

咲さんの子ども!?
それとも俺の代わりにタイムスリップした2009年の"俺"なのか?

俺は震える手でページをめくった。

橘仁一郎・・・旗本として代々続いた橘家に双子の弟として生まれる・・・父は恭太郎、双子の兄は恭一郎・・・。

恭太郎さんの息子さん・・・。
どうやら、恭太郎さんは、あの後、外国へ留学し法律家となって帰国後に結婚し、恭一郎と仁一郎を授かったようだった。
恭一郎は医学の道へ、仁一郎は教育家となり、恭一郎は橘咲が創立した仁友堂病院の後を継いだ・・・。

咲さん・・・仁友堂を守ってくれたんだ・・・。

仁友堂病院の創立者の写真・・・。
老婦人が優しい微笑みを浮かべていた。

咲さん・・・。

俺はそっと咲の顔を指でなぞった。

次第にぼやけてくる写真を俺は見続けるだけだった。

(つづく)
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